【感想】証言 羽生世代(講談社現代新書)なぜ羽生世代は将棋が強かったのか?

 

証言 羽生世代(講談社現代新書)

 

著者は、大川慎太郎さんという
将棋の観戦記者の方です。

本書では「羽生世代」を、
おおむね、

羽生善治とほぼ同学年、
かつ、
奨励会入会がほぼ同期、
かつ、強豪

としているようです。
具体的には、
同学年、同期の森内俊之、郷田真隆。
加えて、1学年上で同期の佐藤康光です。

著者が聞きたかったことは、羽生世代が
・なぜ強く、長年活躍したのか
・それまでの棋士と何が違うのか
・なぜ1970年前後生まれに集まったのか
といったあたりのようです。

 

羽生世代の突き上げを受けた世代

谷川浩司
島朗
森下卓
室岡克彦

の4人に話を聞いています。
谷川九段は、
トップ棋士が持つべきものと、
それをいちばん自然に
実践できているのが
羽生さんであると述べています。

羽生世代の共通点として
「将棋に対する敬意」を挙げています。
自分が取り組んでいるものに
対する敬意。
大切なことかもしれないですね。

また、羽生さんの1学年上で
A級在位のまま29歳で早世した
村山聖の存在を挙げ、
健康で将棋を指せることの
幸せを一番実感している
のではないか、と述べています。
これも、健康への感謝、
将棋への敬意ということでしょう。

島九段は、
羽生、森内、佐藤と行った、
伝説の島研について述べています。

また、羽生世代が感覚ではなく
読みの深さに特徴があるとしつつも、
最後の「精神世代」であると
述べています。
合理性と精神。
両方必要、バランスが大切なのでしょう。

一方、森下九段は、
羽生世代は、
人間力の勝負を否定して
「技術が全て」と明確に打ち出した、
と述べています。
このあたり、棋士によっても、
見方が違うようですね。
ただ、森下九段も、羽生世代を、
羽生さんの変化を感じる
感性の持ち主だった、と、
人間臭いことを述べているのは
面白いですね。

 

同じ時代にくくられる葛藤

藤井猛
先崎学
豊川孝弘
飯塚祐紀

の4人に話を聞いています。

藤井九段は、羽生世代より奨励会入りが遅いです。1970年生まれ前後に、これだけ強い人が集中した理由に、谷川「名人」を挙げています。将棋の印象が良くなり、親が許可しやすくなったのではないかと。まあ、現在も、親が、親世代にイメージの良い就職先を勧める、ということもあるようですし、そのような面はあるかもしれませんね。

先崎九段は、ほぼ同期で、同学年ですが、タイトルを獲っていません。羽生さんの強さの1つに、中学生の時、八王子駅まで○○していたことを挙げています。対局料で○○を買った時は、すごいうれしそうだったそうです(笑)。

豊川孝弘七段、飯塚祐紀七段は、少し年長ですが、奨励会同期です。

 

世代交代に挑む

渡辺明
深浦康市
久保利明
佐藤天彦

の4人に話を聞いています。
羽生世代の後輩です。

渡辺名人は、
AI全盛の現在よりも、
羽生世代と指していた時のほうが、
ハイレベルだった、
という意外な意見を述べています。
もちろん、
純粋な勝負という面では、
AIのほうが強いでしょう。
しかし、渡辺名人は、
ソフトに頼ることによって、
棋士のピークの訪れが早くなり、
自分も、その対策として、
自分の頭で考える癖を
つけるようにしている、
と述べています。

深浦九段も、羽生世代から
「自分の頭で考えること」を
学んだと述べています。

AIと自分の頭で考える。
この問題に結論が出るのは、
10年ほど後、
AIを駆使して勝っている
今の若手がどうなっているかを
楽しみにしましょうか。

久保九段は、
羽生世代から
「二日酔いになったり、
ギャンブルをしたり、
しない人がトップになるんだな」
と学んだそうです。
これに関しては、
囲碁の藤沢秀行名誉棋聖のような
人もいるので、
何とも言えないですね(笑)。
まあ、例外を許すという意味での
一般論としては、
そうなのかもしれません。

「貴族」のニックネームがある
佐藤天彦九段は、
羽生さんからは
「芸を執り行うような雰囲気」
を感じると述べています。
「貴族」ならではの独特の感性ですね。

 

羽生世代の「これから」

佐藤康光
郷田真隆
森内俊之
羽生善治

の4人に話を聞いています。

佐藤康光九段、会長は、
羽生世代と羽生さんは
区切ったほうがいい、
とご謙遜されています。
また「自分の頭で考える」という、
少し後輩から出たキーワードも、
佐藤会長から語られます。

森内九段、羽生九段も、
この世代に強い人が集中した理由に、
谷川「名人」を挙げています。
本音なのかもしれませんが、
このあたりの謙虚さ、他者への敬意、
人間性も強さの秘密かもしれないですね。

 

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