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The Science of Running(スティーブ・マグネス):中長距離走の運動生理学と練習メニューの考え方

 

The Science of Running:中長距離走の運動生理学と練習メニューの考え方

 

筆者はSteve Magnessさんという、中長距離走のコーチです。運動科学の修士号を持っています。2019年世界陸上ドーハ大会の女子マラソン6位は、41歳のアメリカのフルタイム勤務の看護師でしたが、Steve Magnessさんが指導したそうです。

 

『The Science of Running』の序文

市民ランナー向けではなく、トップレベルのランナー向けの本である。
現場のコーチと実験室の科学のギャップを埋めたい。
ということが書かれています。

 

『The Science of Running』の前書き

再び、現場のコーチと実験室の科学のギャップを埋めたい。
レナート・カノーバは筋繊維の動員に関する知識をもとに、ヒルスプリントと筋力持久力サーキットを用いて、持久力を伸ばすメソッドを開発した。
科学を知れば「まね」から開放される。
ということが書かれています。

 

My Rules of Everything

私達には、以下のような傾向があるとします。

1.新しいアイディアは最初は過剰に強調され、やがて本来の位置に戻る
2.研究は測定方法次第で良し悪しが決まる
3.測定できることやわかっていることを重要視しすぎる一方で、測定できないことやわかっていないことを無視する
4.実際に存在するスペクトル(連続的な変化)ではなく、絶対的なものやどちらか一方で考える。
5.人体(およびその他ほとんどすべてのもの)の複雑さを過小評価している。
6.自分の視点で物事を見て分析し、自分の知識ベースの強みを強調しすぎる。
7.すべてのものは周期的に生まれては消えていく。
8.極端な見方をすることは良いことではない。

 

トレーニングのルール

1.維持くらいなら強化より簡単
2.トレーニングの目的は過去に行われたことの上に構築すること
3.すべてを進化させる
4.バランスをとる
5.個別指導する

 

『The Science of Running』の第一部 中長距離走の科学

1.ランニングの仕組み

能動的力学…筋肉を積極的に動かし、筋肉の収縮によって力を発生させる
受動的力学…筋肉や腱、靭帯などの身体がバネのように働き、足が地面に衝突したときのエネルギーを一時的に蓄える仕組み

脳、中枢神経系が運動が始まる場所。

その後は、高校生物のようなことが書かれています。
反応に関わる酵素はトレーニング可能。

速筋を遅筋に変えることは可能だが、長い年月のトレーニングが必要。これが、通学で走っているアフリカ人が長距離で成功している1つだろう。

走る時にすべての筋繊維を動員できるわけではない。(その逆が火事場の馬鹿力。)
トレーニングにより、動員を増やせる。

受動的力学を享受するために、フォームが重要。
能動的力学のみが考えられがち。

 

2.疲労は味方か敵か?

疲労は体を守るためのメカニズム。
体が好む自然な平衡状態であるホメオスタシス(恒常性)をはるかに超えてしまっているから。

速筋線維が多いほど、力は大きいが、疲労耐性は低くなる。

 

3.脳:マスターコントローラー

「2.疲労は味方か敵か?」で述べた「疲労は体を守るためのメカニズム」について、脳の観点から論じています。

 

4.酸素の問題?

酸素の運搬に問題がある選手もいれば、利用に問題がある選手もいる。
どの段階を改善するかが大切。

VO2max(最大酸素摂取量)はそこまで重要ではない。

 

5.VO2maxについての誤った考え

トレーニング強度の基準にVO2maxを使うのはふさわしくない。

VO2maxの向上を目指すべきでもない。

 

6.乳酸、酸、その他の副産物

筆者が考えるLTを引き上げるトレーニングが書かれています。

また、Renato Canovaの研究によるMaximum Lactate Steady State(ケニアのエリートランナーが5kmや10kmのレース中に血中乳酸濃度を安定している状態)の養成のしかたが書かれています。

 

7.効率性

ランニングエコノミーについて書かれています。

アキレス腱は運動エネルギーの35%を貯蔵し、足のアーチにある腱は17%を貯蔵する。

(当たり前だが)走るフォームが大切。

長距離ランナーも、ランニングエコノミーを高めるために、ホップ、ジャンプ、バウンドなどのリアクティブ・プライオメトリック・トレーニングが有効。
また、60~100mほどの加速走も有効。

頻繁にトレーニングしている速度で走る方が効率的。
つまり、レース前はレースペースの練習を多く入れる、ということでしょう。

接地のフォアフットストライク、ミッドフットストライク、ヒールストライクについて考察しています。

 

8.脳と筋肉の関係性

トレーニングにより速筋から遅筋に変化する可能性はある。
これは、長距離ランナーがスプリントやパワー系のアスリートに比べて、パフォーマンスのピークに達するのが遅い傾向にあることを部分的に説明できる。

内的動機、外的動機の両方が大切

アスリートは苦痛に耐える力が大きい

 

9.トレーニングの遺伝学

トレーニング刺激→メッセンジャー→シグナル伝達経路→遺伝的な反応→機能的な適応
という順序でトレーニングとその効果が現れる、という難しい話が書いてあります。

ミトコンドリアの発達を意図しても、複数のトレーニングの方法がある、ということでしょう。

 

10.トレーニングの適応性に関する理論

疲労→ストレスに対する「警報」→回復→適応→トレーニング前よりパフォーマンスが高まる

トレーニング負荷は低すぎても高すぎても適応が少なくなる

刺激に対する適応は個人個人で異なる

 

11.トレーニングの量と強度

コーチは科学的研究がトレーニングについて何を言っているのかを理解することが大切。
科学的研究が言っていることがなぜ多くのコーチが推奨していることと違うのかが、さらに大切。

十分なトレーニングを積んだランナーが、LT付近の強度のトレーニングをすると、VO2MAXは向上しないが、LTは向上する。

実験からも、中長距離の常識通り、高強度のトレーニングをする前に、適度な強度の土台(中長距離ランナーなら、まずまずのペースで90分ほどJogしても、そこまで疲労を残さないような基礎体力でしょう。)を築くべき。

ミトコンドリアの生合成につながる適応を達成するには2つの全く異なる方法がある。このことは、これらの適応を最大化するためには、両方の刺激が必要であり、個人やそのトレーニング状況によっては、一方の経路が他方よりも活性化しにくい場合があるということを示唆している。

トレーニングの目的は、目標とするペースで走れる期間を、レース本番の距離に達するまで延長すること。

 

12.トレーニングの期分け

期分けとは、期間ごとにトレーニングの重点や目標を変更するプロセス。

線形モデル…リディアードが行った、有酸素ランニング→ヒルトレーニング→トラックトレーニング、と徐々に短く、速く、研ぎ澄ましてゆく期分け。

漏斗モデル…専門とする距離のレースペースに向けて、長くゆっくりの側と、短く速くの側と、両方からアプローチする期分け。レナト・カノーヴァ(Renato Canova)などが用いている。

 

13.私達はここ(運動生理学)からどこへ行くのか?

科学者とコーチの違い、研究を現実の世界に適用する際の問題点、などが書かれています。

 

『The Science of Running』の第2部 トレーニングのしかた

 

14.トレーニングの哲学

コーチが知っておくべき3つの重要な要素
1. 求めているトレーニング適応。
2. どのような刺激がその適応につながるのか?
3. どのくらいの量で十分なのか?

 

15.私達は何を達成しようとしているのか?

前半は、再び、疲労について書かれています。

すべての走スピードはつながっている。私達はトレーニングを個別に考えがちだが、すべての走スピードの間には大きな相互作用がある。つまり、分類は、専門種目のレースペースから始まり、連続性のあるものとして考えるべき。それぞれのトレーニング強度は、前後の強度をサポートする。

Recovery
General Endurance…専門より3つ長いレースペース
Aerobic Support…専門より2つ長いレースペース
Direct Endurance Support…専門より1つ長いレースペース
Specific…専門のレースペース
Direct Speed Support…専門より1つ短いレースペース
Anaerobic Support…専門より2つ短いレースペース
General Speed…専門より3つ短いレースペース
Neuromuscular

トレーニングのペースごとに微妙に異なる刺激が与えられ、異なる適応が得られるので、例えば、LT走と、専門のレースのペースのみ、など特定のペースの練習のみにするのは望ましくない。

従来、トレーニングは、ゆっくり長く→速く短くの順番で行うとされてきた。
しかし、本書では、専門種目のレースペースをピラミッドの頂点として、ピラミッドの土台には、ゆっくり長くと速く短くがある。たとえば、スピード持久力を養成するためには、純スピードが必要。
ただし、本記事の筆者の私見だが、本書のようなピラミッドでうまくいくためには、相当の体力、たとえば5000mで男子だと15分台、が必要で、そうでない場合、従来のピラミッドモデルが良いのではないかと思われる。体力がない選手の場合、ゆっくり長くと速く短くを同時期に両立させるのは困難で、目的が達成できない可能性が高い。また、故障のリスクも高い。

 

16.練習メニューを創る、操る

1.適応と方向性
2.向上か維持か
3.過負荷の度合い

 

17.トレーニングを個人に合わせる

個々人が、速筋寄りか遅筋寄りかでの、トレーニングの違いについて書かれています。
ただし、本記事の筆者の私見ですが、本書はエリートランナー向けであり、並の中長距離選手は、とりあえず90分ほどJogできる体力をつけるのは大前提だと思います。あとは、長めのトラック練習は、5000mのレースペースを基準にペース設定をすれば、本書に書いてあるような練習になると思います。

 

18.練習メニューを定義する

 

steady running

マラソンペースより5~10%遅い。会話はできるが息継ぎが必要になる。

 

easy running

マラソンペースより25%ほど遅い。楽に会話ができる。

 

Strides(流し)

100~150m程度を、十分な回復をしながら、1500m~5000mのレースペースで速いスピードでくり返す。
有酸素ランニングが多い時期にスピードを維持する、良い動き、速筋繊維の動員、翌日の練習のために筋肉の適度な緊張を保つ、などが目的。

 

Surges(急上昇、波)

有酸素ランニングの途中で行うStrides。5000mのレースペースかそれより速く、15~60秒行う。
レースペースへのスムーズな移行。ペース変化のときに速筋を動員する訓練。
たとえば、10kmの有酸素ランニングの途中で
30″×6 2’30”空けて
45″×6 2’15″空けて
60″×6 2’00″空けて

 

Pickups

ランニングの終盤にペースを徐々に持続的に上げていく。最後の2~10分をマラソンペース、LTペースまで上げる。

 

Progressions

Easy→マラソンペースかやや速いまで上げる。

トラックでのインターバルで徐々に上げる。

 

Alternations(交互)

速い区間と遅い区間を交互に走る。
スピードや距離により、800m~マラソン用に使える。
目的は、遅い区間もそれなりのスピードで走ることにより、乳酸の使い方を訓練するなど。
たとえば、5000m向けには
900(5000RP)700(steady)×4 など。

 

Combo Workouts

2つ以上の異なるタイプのワークアウトや強度を組み合わせたもの。たとえば、

LT走20分+スプリント10秒×6

など。移行期や維持(維持は向上よりはるかに簡単の原則)に使う。

 

Blend Workouts

2つ以上の異なる走スピード度が混ざっているもの。たとえば、

1000、400、900、300、800、200を長い距離を5000mRPで、短い距離を1500mRPで、間は3分レスト。

 

ボトムアップとトップダウン

ボトムアップは、インターバル走で、レースペースで走り、続けて走る距離を徐々に伸ばす。

トップダウンは、インターバル走で、続けて走る距離はそのままで、ペースをレースペースに向けて上げていく。

 

リディアード式タイムトライアル

レースの距離を走るなら、2~4%遅くする。

レースペースで走るなら、距離を3/4ほどにする。

 

19.すべてをまとめる:期分け

1シーズン内のみの期分けだけでなく、選手のキャリアを通しての期分けについても語られます。

後半は、適度な筋肉の緊張について語られます。

 

20.それぞれの種目のトレーニング

800m、1500m、5000m、10000m、マラソンの具体的な練習メニューと考え方が述べられています。スピード側から、持久側から、専門種目のレースペース、メンテナンスというアプローチがされています。

 

21.筋力トレーニングのしかた

筋持久力について、「General Strength Endurance」「High Intensity Strength Endurance」に分けて述べています。
その後は、いわゆる筋トレについて述べています。

 

鍛錬期

週2回、フルスクワットとクリーン、4~5回を2セット

試合準備期

週1~2回、スクワットジャンプ(体重の30%のバーベル)+スタンディングロングジャンプ(体重の20%のダンベル)+ボックスジャンプ(体重の10~15%のダンベル)を6~10回ずつ(レスト30~90秒)を2セット(セット間3~4分)

後期試合準備期

週1回、スタンディングロングジャンプ+ボックスジャンプ+片足スクワットジャンプを6~10回ずつ(レスト30~90秒)を1セット

両足leg hop+両足tuck jumpを5回ずつ1セット

試合期

週1回、両足leg hop+片足leg hop+バウンディングを6~8回ずつ1セット

ピーキング時

何もしないか維持する程度。

 

ラストスパートの鍛え方、5000mのレースにおける乳酸定常状態の作り方(エリート向けらしい)についても述べています。

 

22.ランニングのバイオメカニクス

走りの動きについて述べられています。

 

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800m走で後半にペースが落ちる原因と対策の練習メニュー

 

800m走で後半にペースが落ちる原因と対策の練習メニュー

 

はじめに

800m競走で
レースの後半で
ペースダウンしてしまい
悩んでいませんか?

実は、たとえば
もう少し長い1000mを
練習で走る、といった取り組みだけでは
上手く行かない可能性も高いです。

本記事は800mの後半を走り切るために、
科学的な根拠に基づいて、

効果的なトレーニング方法を
紹介します。
中学生、高校生から
トップレベルのアスリートまで、
レースでペースを保ちながら
自己ベストを更新するための
ヒントとテクニックを
お届けします。

本記事を読めば、
あなたの自己ベストに
革命をもたらし、
目標に到達する手助けとなることを
確信しています。
今すぐ読み進めて、
800mでの勝利に向けた
足跡を刻み始めましょう!

800m走で後半ペースが
ダウンするのは、
いくつか原因が考えられます。

 

1.前半のオーバーペース

特に、中学生、高校生は
単に、前半のオーバーペースで
後半にペースを落とし、
全体のタイムも落としている場合が
多いようです。

800m走の適切なペース配分は、
後半より前半の方が
3秒ほど早い、
程度だと言われることが多いです。

レースで自己ベストを狙うにしても
適切な目標を設定し、
その目標タイムに適切な
1周目の入りのペース感覚を
日々の練習で養いましょう。

また、知人に頼んで、
100mあたりでタイムの
流し読みをしてもらうのも
いいと思います。
普通、200mで読んでもらえることが
多いかと思いますが、
200mでは手遅れの可能性も
あります。

 

筋肉のコリ、猫背に悩む人へ

🌱 なぜケアポールがオススメなのか?

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陸上の選手も実践!
『<東大式>マラソン最速メソッド』
の著者、東大生箱根ランナーの
松本翔さんも、著書の中で
「必ずケアポールの上に仰向けになって
 背中の張りをほぐし、肩甲骨を
 自然な位置にリセットします」
と書いています。

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体のコリやねじれ、
猫背の改善…
あらゆる体の悩みに対して、
このケアポールは効果を発揮します。

使いやすさ
1メートルの長さと
15センチメートルの底面直径で、
どんな場所でも気軽に使用できます。

🌟 まとめ 🌟

健康的な身体は、
快適な毎日を過ごすための第一歩です。
私が実際に試して、
信じることができるこの
「ケアポール」を、
皆さんにもおすすめしたいと思います。

 

2.有酸素能力が低い

800mで後半にペースダウンする場合、
次に論じる「スピード持久力」の問題が
まっ先に語られがちで
1000mのレペをするとか
インターバルをするとか
という話になりがちです。

800m走の
有酸素性エネルギー:無酸素エネルギーの
具体的な割合は男子の場合

60:40ほど[1]

とされます。

女子はレースの時間が長いので、
さらに有酸素性に寄ります。

経験上も、
陸上部の人はわかると思いますが、

3000m、5000mを走れる人は、
スプリントがなくても
意外に、自分にとっては
かなりのハイペースで
400mを通過しても
そのまま800mを
走り切ることができます。

練習の1000m1本くらいになると
長距離の人に負ける
800mランナーは多いでしょう。

したがって、800mの後半に
ペースが落ちるのを防ぐには
有酸素能力の向上が
効果が高いと思われます。

有酸素能力の向上に
効果的な練習は以下のとおりです。
各練習について詳しくは

練習の種類と目的

を御覧ください。

 

快調走

Jogの一種です。
体感としては、
快調に走り、快調に終えるペース。
適度な疲労感がありますが、
心地よい範囲内での疲れ。
無理なく続けられる感覚、
といったあたりが大切です。

体感でいいと思いますが
具体的にどのくらいのペースで
走ればいいかは、
『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』
(ベースボール・マガジン社)に
載っています。

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もともと800mのタイムでの
換算は載っていないのですが
後半にペースが落ちるような
800mランナーは、
1500mではなくて、
3000m、5000mの持ちタイムから
快調走のペースを
決めたほうが、身の丈に合い
いいと思います。

たとえば、
5000mが17’00″の人は
4’15″~4’49″/kmで
快調走をすればいい、
といったことが表になっています。

時間は、
中学生は40分
高校生は60分
大学生は90分
ほど行いたいです。

もちろん、快調走の前に
スローJogで上記の時間を走っても、
それほど疲れない体力を
つけておく必要があります。
少しずつ時間を伸ばせば、
このような体力は
つけることができます。

Jogといえども、
継続時間が長いので、
有酸素能力の向上の適応のための
刺激を十分に得られるはずです。

 

LT走(閾値走)

LT(Lactate Threshold)とは、
乳酸性作業閾値
血中乳酸濃度が急激に上昇する運動強度。
詳しくはこちらをご覧ください。

中長距離の生理学

LTを引き上げるには、
LTあたりのペースで走るのが
いいとされます。
これも、
『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』
(ベースボール・マガジン社)に
持ちタイムとLTペースの
換算表が載っています。
たとえば、
5000mが17’00″の人は
3’40″/kmがLTペースです。

時間はどのくらいかと言うと、
『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』
では、週の走行距離が64kmまでの人は

20分、または、
5~6分(1分JOG)×4

としています。
800mの後半で困っている人は
多くは64km/週でしょう。
下の分割するLT走を
クルーズインターバルと
呼んでいます。

 

3000RPでのインターバル

RPとはレースペースのことです。
3000mRPのインターバルの
代表的なものとして

400(200jog)×10

などが挙げられます。

人間の体は複雑なので
「この練習がこの能力を鍛える」
と1対1で対応するわけでは
ありませんが、
この程度のインターバルは
何らかの改善により
有酸素能力を向上させることが
期待されます。

 

3.スピード持久力が低い

上でも書きましたが
「後半ペースが落ちるのだから
 スピード持久力が足りない」
というのはわかりやすい話だと
思います。

 

1000mをほぼ全力で走る

1本でもいいですし
1000×2 10分おき
といったメニューでもいいでしょう。

800mよりやや長い距離を
ほぼ全力で走りますから、
スピード持久力向上の
適応を得ることが期待されます。

 

坂ダッシュ、ウエイトトレーニング

以外なメニューが出てきましたね。
坂ダッシュ、
ウエイトトレーニングには、
スピード持久力を高める
効果もあります。
東アフリカ系の
エリートマラソンランナーは、
鍛錬期に坂ダッシュをやる
一団もあります。

坂ダッシュ、
ウエイトトレーニングが、なぜ
スピード持久力に有効なのかは
以下のページに
詳しく書いてあります。

スピード持久力

簡単に説明すると、
人間、筋肉の100%が
働いているわけではありません。
そこで、坂ダッシュや
ウエイトトレーニングをすると
動員できる筋肉の割合を
増やすことができます。
働く筋繊維の本数が増えれば、
1本1本の筋繊維の負担は
減りますから、
スピード持久力が向上する
というわけです。

 

4.中間疾走の技術が低い

800m走は、
いかに中間疾走でリラックスして
消耗を減らすかも
大切な要素の1つです。

世界陸上400mHで銅メダルを2回獲った
為末大さんのYouTubeチャンネル
「為末大学」の2020/05/29
「バックストレートの走り方」

を見るといいと思います。
400mの話ですが、
為末さんも冒頭で
「近い技術は800mにもある」
と述べています。

コツは、接地だけ力を入れて、
あとは力を抜く、
ということです。

 

5.レースペースの練習が足りない

特に春先に多い話だと思います。
春先に800mで異常に悪いタイムが
出ることが多いです。

もちろん、生理学的指標が
仕上がっていない、というのも
原因の1つかと思います。

一方、走りの動きの問題も
あるのではないかと思います。
冬練からレースペースの練習に
移行しても、
冬の間の小さい動きになっているので、
おそらく、レースに出ても、
シーズン最中よりも
動きが小さく、
前半で思ったより
消耗していて
後半ペースを落とし、
タイムが悪い
ということなのではないかと思います。

経験則から言うと、
ピークと考えている試合の前に、
実際に、何試合か出る
というのがいいようです。
なぜか、自分の学校での練習では
あまりうまく行かないケースが
多いような気がします。

 

800mの練習法

 

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【中距離走】800m、1500m。初心者、中学生、女子の練習のコツ。:基礎体力のつけ方、フォーム

 

【中距離走】800m、1500m。初心者、中学生、女子の練習のコツ。:基礎体力のつけ方、フォーム

 

・初心者

・中学生

・女子

 

800、1500m初心者の練習のコツ

 

陸上初心者で、
練習のしかたがわからず
悩んでいませんか?

実は、ほんのいくつかのコツを
知るだけで、
むしろ経験者よりも
中長距離の通に
なれるかもしれません。

本記事を読めば、
走り方、基礎体力のつけ方、
初心者のうちに試合に出る場合、
などについて、
理解することができます。

 

初心者の定義

「陸上初心者」と言っても、
様々な人が考えられます。
たとえば、
それまでにも運動部に入っていて、
半端な陸上部員より
も走っていた人もいるでしょう。

このページでは「初心者」を、
「今までの人生で、
あまり走ってこなかった人」
と定義します。

もちろん、運動部で
今まで走ってきた人も、
「走り」や「中距離走」についての
知識は少ないでしょうから、
このページで得られるものは
多いと思います。

 

筋肉のコリ、猫背に悩む人へ

🌱 なぜケアポールがオススメなのか?

・信頼性
陸上界では有名な
NISHIブランドの商品です。
ニシ・スポーツ社は
アシックスの100%子会社です。

陸上の選手も実践!
『<東大式>マラソン最速メソッド』
の著者、東大生箱根ランナーの
松本翔さんも、著書の中で
「必ずケアポールの上に仰向けになって
 背中の張りをほぐし、肩甲骨を
 自然な位置にリセットします」
と書いています。

身体の悩みにアプローチ
体のコリやねじれ、
猫背の改善…
あらゆる体の悩みに対して、
このケアポールは効果を発揮します。

使いやすさ
1メートルの長さと
15センチメートルの底面直径で、
どんな場所でも気軽に使用できます。

🌟 まとめ 🌟

健康的な身体は、
快適な毎日を過ごすための第一歩です。
私が実際に試して、
信じることができるこの
「ケアポール」を、
皆さんにもおすすめしたいと思います。

 

初心者が走る前に

世界陸上400mハードルで
銅メダルを2回獲った
為末大さんのYouTubeチャンネル
「為末大学」には、
走りの初心者のための
動画もあります。
YouTubeの検索窓に
表題を入れると、
すぐに見つかると思います。

2022/01/14「中学生(初心者)でもわかる走りへのアドバイス」

・空き缶をつぶすように、地面を真上から踏む
・落ち葉の上にふわっと足を置くイメージ
・まっすぐ前を見る、体を真っ直ぐにする

2021/06/06「陸上部に入りました、何から始めたら良いですか?」

・片足で地面に力を加え、乗っかる

2022/02/23「市民マラソンランナーの基本練習」

・股関節で走る
・末端に近い部分を稼働させない

2022/04/27「身体が前に倒れる力を利用したランニングフォームの基礎」

・先に自分が前に倒れて、後から足が出てくる

2021/06/22「結局陸上で一番大事なことって何?」

・体の位置を探ること

2020/06/02「蹴らない走り方」
2023/03/08「蹴らない走り方」

 

800m、1500mの初心者の練習法

 

1.Jogを長くできるようにする

まずは、ゆっくりで
楽なペースで、
最初は10分でもいいから、
少しずつ時間を増やして、
中学生なら30分
高校生なら40分
大学生なら60分ほど
スローJogをしても、
それほど疲れない
体力をつけましょう。
段階を踏めば、
このような体力は、
つけられるものです。

時間を増やす時の目安は、
前の時間でそれほど
疲れなくなったら、です。
1度に増やすのは、
5~10分ほどかと思います。

1500mはかなり、800mは意外に
有酸素寄りなので

走り始めたばかりの人は、
スローJog中心の練習で
順調にタイムが伸びます。

ーーー裏技ーーー

速歩で心拍数120/分程度に
達する坂、または、
傾斜をつけられる
ルームランナーを使えば、
故障のリスクなく、歩くだけで
心肺機能、脚筋力、
筋持久力を養成できます。

ただし、走りとは違う動きが
固まってしまう可能性があります。
上記の為末大さんの動画を見て
走りのドリルと併用すると
いいでしょう。

ーーーーーーーーーーーーーーー

ただし、ゆっくり走ってばかりだと、
日を重ねるにつれて、
足が重くなると思います。
これは疲労ではなく、
神経系(人間はそのようにできています)
や筋肉の弛緩の問題です。

初心者でも、何日かに1回は、
Jogを終える10分ほど前に
レースペースあたりで
リラックスして走る
(流し、ウインドスプリント
 と言います)
練習を100m×数本、入れましょう。
そうすると、
走りの軽やかさを保ちつつ
Jogを継続できると思います。

この間にレースに出たい場合
1週間前と3日前あたりに
ちょっとレースペースの
練習を入れると、
レースで少し走れると思います。

たとえば、
800mなら、
500×2 10分おき

1500mなら
1000×2 10分おき

といった練習を入れると
いいと思います。

 

2.筋トレ

筋トレは故障のリスクが少ないので
Jogの体力とも相談して
ガンガンやっていいと思います。

やはり、為末大さんの
YouTubeチャンネル
「為末大学」がいいと思います。
筋トレのやり方のみならず、
意義も教えてもらえます。

2020/03/09
「体幹トレーニングと股関節」
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「股関節まわりを鍛えるワイドスクワットジャンプ」

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大殿筋、腹圧

2020/08/23
「背筋の役割」

2022/04/04
「競技に効果的な腹筋の筋トレ方法」

 

3.Jogを快調走にする

上記のように
中学生30分

高校生40分
大学生60分ほど
スローJogをしても
それほど疲れなくなったら、
Jogのペースを上げて、
快調走にしましょう。
Jogといえども、継続時間が長いので
有酸素練習の1つとして
有力な練習であると考えます。

快調走も、最初は疲れますが
走っている途中は、
きつくないペースです。

どのくらいの持ちタイムの人が、
どのくらいのペースで
快調走をすべきかは
『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』
(ベースボール・マガジン社)
に載っています。

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たとえば、1500mが5’30″の人は
5’01″~5’40″程度で
快調走をすると、
有酸素能力の向上と
疲労の少なさの
バランスがいい、ということです。

 

4.少しずつトラック練習を入れてみる

上でも、Jogの時間を増やす過程で
試合に出たい場合の
トラック練習の例を書きました。
現段階では、上記のものでも、
800m、1500mの練習として
十分だと思います。
ただ、もう少し、
バリエーションを増やし、
たまに入れてもいいかもしれません。

たとえば、800mなら
1000(1500RP)500(RP)300(400mRP)
RPはレースペースの略。10分おきスタート。
1000はスピード持久力を

高めるでしょうし、
300は、レースより速く走ることにより
レースで楽に走れるでしょう。

1500mなら
1600(3000RP)1000(RP)500(800RP)
15分おき、10分おきスタート。
1600はスピード持久力を
高めるでしょうし、
500は、レースより速く走ることにより
レースで楽に走れるでしょう。

 

4.中級者へ

快調走をこなしても
それほど疲労を残さなくなったら、
中距離練習をこなす
基礎体力がついたと言えるでしょう。
下記のページで、
中、上級者向けの練習に移りましょう!

800mの練習法

1500mの練習法

 

中学生の800、1500mの練習の注意点

 

中学生だから、
成人向けの練習メニューが
参考にならないと思って
悩んでいませんか?

実は、いくつかのことに気をつければ
中学生も、成人向けのメニューを参考に
練習して、順調に
記録を伸ばすことができます。

本記事を読めば、
運動生理学、意欲、
走りの動きについて
中学生と指導者が
気をつけるべき
いくつかのポイントを
知ることができます。

 

運動生理学、意欲

『リディアードのランニングバイブル』
(大修館書店)には
「少年・少女のランニング」
という章があります。

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『リディアードのランニングバイブル』や、
リディアードが誰かについては、
当サイトのトップページに書いてあります。

トップページ

リディアードは、
適切にペースを守った
有酸素ランニングであれば、

私自身の経験と
諸外国での研究や実験を
考え合わせると、
7歳ぐらいから
何の悪影響も出さずに
ある程度の量の長距離走を
消化できるようである。

と述べています。
少年・少女にとって、
有害なのは、
無理して追い込むような無酸素練習、
加えて、
トレーニングを強いるコーチ。
子どもにスポーツを
楽しませるより、
自分の子供が他人の子どもを
負かすのを見ることのほうに
興味があり、
自分が優越感に
浸りたいがために
自分の子どもを強いている親、
のようです。
このような大人が、
子どもの才能をぶち壊すこともある、
とリディアードは述べています。

逆に言うと、
以上のようなことに気をつければ、
中学生も、
ペースや本数を調整すれば、
成人と同じような方針で
練習をすることができます。

成人の800m、1500mの練習法は
下記に書いてあります。

800mの練習法

1500mの練習法

 

走りの動き:早すぎる最適化

YouTubeで
「早すぎる最適化」と検索すると
為末大さんのYouTubeチャンネルの

『なぜ昔の天才が伸びなくなるのか
 【為末大学】早すぎる最適化』

という動画が出てきます。
単純に大人を小さくしたものが
子どもではないし、
子どもは筋力が弱いし、
手足もやや短めなので、
子どものときに最適化した動きが
大人になると最適ではなくなる
という話です。

為末さんは中学チャンピオン、
いわば早熟です。
その一方で、400mハードルに
種目は変えましたが、
世界陸上で銅メダルを2回獲り
成人してからも成功しています。
小、中学校の先生は、
為末さんの動きを
あまりいじらなかったそうです。
高校、大学くらいから、
動きを洗練させたそうです。

運動生理学と
バイオメカニクス(走りの動き)と
違いはありますが、
リディアードと為末さんは、
おおむね、同じようなことを
言っているでしょうね。

 

女子の800m、1500mの練習の注意点

 

女子は、なにか男子と違う
練習をしなければいけないと思って、
悩んでいませんか?

実は、女子も
いくつかのことに気をつければ
男子と同じ練習をしても
大丈夫です。

本記事を読めば、
レースの時間が
長いことからくる違い、
骨盤の大きさかたくる違い
などについて
理解することができます。

 

運動生理学的な男子との違い

近年、言うまでもなく、
陸上界では女子が
大活躍しています。
したがって、
女子が800、1500m走に
取り組むことは、
全く問題ないですし、
練習メニューも
ほぼ、男子と同じ考え方で
いいと思います。

800mの練習法

1500mの練習法

ただし、本記事で何回も出てくる
「為末大学」には、

『男子の短距離と女子の短距離は
 違う競技【為末大学】』

という動画があります。
走る距離は同じでも、
女子の方が走る時間が長いので、
練習も走る時間に
着目したほうがいいのではないか
と述べています。

有酸素性エネルギー:無酸素エネルギーの
具体的な割合は男子の場合

800m   60:40ほど[1]
1500m    77:23ほど[2]
5000m~ ほどんど有酸素性

とされます。
女子はレースの時間が長いので、
さらに有酸素性に寄ります。

したがって、もともと中距離走は
直感に反して、
かなり有酸素的なのですが、
女子の場合、
もっと有酸素練習が多くても
いいのではないか、ということです。

 

走りの動きの男子との違い

本記事で何回も出てくる
「為末大学」には、
「女子は上半身が大事」
という動画があります。
女性は骨盤が大きいので、
走る時、上半身のねじれが
大きくなるので、
広背筋、外腹斜筋あたりを

鍛えたほうがいいのではないか、
というのが為末さんの仮説です。

 

女子特有の問題

女子には、女子特有の
問題があります。
男性コーチは意識して、
デリカシーをもって
接したほうがいいでしょうね。
このあたり、十分に、
指導者間での講習会などが
開かれることを望みます。
女性特有の問題についても、
『リディアードのランニングバイブル』の
「女性のランニングについて」の章に、
少しだけ記述があります。

 

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女子800m走で2分30秒を切る練習メニュー:快調走、レペ

 

女子800m走で2分30秒を切る練習メニュー:快調走、レペ

 

800mでどうしても
2分30秒を切れずに
悩んでいませんか?

実は、800mは
ただ、なんとなくトラックで
苦しい練習をしていても
なかなか記録は伸びません。

本記事を読めば
現場の最先端の考え方と

運動生理学に基づいて、
効果的に2分30秒を切る
練習方法を知ることができます。

 

800mで2分30秒を切る考え方

800mの練習メニューの
一般論については

こちらで紹介しています。

基本的に、この通りにやれば、
順調に伸びます

ただ、本ページでは、
リクエストに応えて、

800m2分30秒に特化して
書いてみたいと思います。

 

練習の組み立て:漏斗型にする?

中長距離の練習の最先端の考え方は
「レースから遠い時期に、
 レースペースから遠い
 練習を行う。
 レースが近づくにつれ
 レースペースに近い
 練習を増やす」
というものです。

かつてのピラミッド型
(レースから遠い時期に
 遅い練習をし、
 レース期に速い練習をする)
に対し、

漏斗(理科で使いますね)型と
呼ばれます。
レナト・カノーヴァ氏
(Renato Canova)
という世界的コーチや、
スティーブ・マグネス
(Steve Magness)氏という
コーチなどが推奨しています。

色々な練習をするのは、
色々な刺激に対し、
体が色々な適応をするので
色々な能力を引き出せる
という考え方です。
このあたりの運動生理学は
下記のページに書いています。

中距離の運動生理学

ただ、中距離練習は負荷が高いので、
2分30秒を切れないような選手が
同時期に、色々な練習をこなすのは
厳しい可能性もあります。
ピラミッド型で、

冬は快調走メインでプラスアルファ。
試合期はレースペースメインで
プラスアルファ、程度が
現実的にこなせる練習である
可能性もあります。

1週間の組み立てとしては、
1勤1休
(ポイント練習と休養的Jogが交互)
くらいがせいぜいかと思います。

特に、冬期練習や、
シーズン中でも有酸素能力や
スタミナを維持するために、
「快調走」はポイント練習に
組み込んだほうがいいと思います。

各練習メニューについて
詳しいことは下記に書いてあります。

中距離走の練習の種類と目的

 

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快適な毎日を過ごすための第一歩です。
私が実際に試して、
信じることができるこの
「ケアポール」を、
皆さんにもおすすめしたいと思います。

 

800mで2分30秒を切るための練習の種類

 

練習の種類には、
以下のようなものがあります。

RPとはレースペースの略です。

1.快調走
2.LT走
3.3000mRP(インターバル)
4.1500mRP
5.800mRP(レペ)
6.400mRP
7.坂ダッシュ、平地ダッシュ、筋トレ

 

1.快調走

快調走の前に、
まずは、ゆっくりでいいから、
少しずつ時間を増やして、
中学生なら40分
高校生なら60分
大学生なら90分ほど
Jogをしても、
それほど疲れない
体力をつけましょう。
段階を踏めば、
このような体力は、
つけられるものです。

快調走の狙いは、
リディアードは、
有酸素能力を高めるための
大切な練習と位置付けます。
有酸素エネルギーを生成する
ミトコンドリアの数と大きさを
増加させる狙いなどもあります。
また、基礎体力が向上するので
練習をしっかりこなす
体力を養成することができます。
予選、準決勝、決勝と
走り抜くスタミナを
養成することもできます。

ダニエルズは、
「イージーランニング」として、
もっと速いトレーニングの前の
故障に対する耐性づくり、
心筋の発達、血液の酸素運搬能、
筋線維の改善を目的とします。

いずれにしろ、快調に走り、
快調に終えるペース、
体調でなければなりません。

800m走の
有酸素性エネルギー:無酸素エネルギーの
具体的な割合は男子の場合

60:40ほど[1]

とされます。

女子はレースの時間が長いので、
さらに有酸素性に寄ります。
イメージに反して、
有酸素練習が大切そうだ
ということがわかると思います。
リディアードは、
1964年の東京五輪中距離2冠の
ピーター・スネルに、
マラソンをそこそこのタイムで
走れるような練習を
させたそうです。

快調走のペースは、
800mが2’35″とすると
3000mは12’00″程度でしょうか。
すると、『ダニエルズの
ランニング・フォーミュラ』
によると、快調走のペースは
5’07″~5’45″/km
あたりとなります。

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冬期や試合が遠い時期は
メインの練習になります。
試合が近い時期には、
維持程度の気持ちで、
たまに入れましょう。

 

2.LT走

LTとは、乳酸性作業閾値。
血中乳酸濃度が
急激に上昇する走スピードです。
有酸素能力の指標となります。
LTを引き上げるには、
LTペースあたりの練習を
するのがいいとされます。

普通、ペース走6000m
といったメニューになると思います。
6000m程度なら、
分割なしで走り続けていいかと思います。

一方、『ダニエルズの
ランニング・フォーミュラ』では
LT走を分割する
「クルーズインターバル」
という練習を提唱しています。
ペース走とは異なり、
LTペースで走りながらも
休息を入れます。
たとえば、
(5~6分)×4 レスト1分Jog
といったメニューになります。

LT走のペースは、
800mが2’35″とすると
3000mは12’00″程度でしょうか。
すると、『ダニエルズの
ランニング・フォーミュラ』
によると、LT走のペースは
4’24″/km
あたりとなります。

冬期や試合が遠い時期は
週1回ほど入るでしょうか。
試合が近い時期には、
維持程度の気持ちで、
たまに入れましょう。

 

3.3000mRP(インターバル)

Int 400(200)×10
Int 1000(400)×5
あたりは、
ピラミッド型にせよ、
漏斗型にせよ、
冬期練習から、
ピークの試合の2ヶ月前まであたりの
主な練習の1つになるでしょう。

試合期までにも、たまに入れて、
3000mRPから得られる能力の
維持を心がけましょう。

 

4.1500mRP

Int 400(200)×7
あたりは、
ピラミッド型にせよ、
漏斗型にせよ、
ピークの試合の1ヶ月前まであたりの
主な練習の1つになるでしょう。

1000(1500RP)500(800RP)300(400RP)
あたりは、400mRPや1500RPから
得られる能力の維持にもなりますから、
ピークの試合の時期に
行ってもいいでしょう。

 

5.800mRP(レペ)

800mの選手の試合期の
メインの練習になります。
たとえば
500×3 10分おき
400×4 6分おき
などです。

800mレースの前半、中間疾走、
ラストをイメージするなど、
タイム以外にも課題を持って
取り組みましょう。 

たとえば、1周目の
400m73″を体に叩き込む、

そのペースで楽に走れる
走りの動きを探求する、
なども目的とします。

この練習を必ず
2分30秒を切るペースで
行うことにより、
レースペースを
体に叩き込みましょう!

 

6.400mRP

短距離の400系と混ざって
400+300+200
などを行うといいと思います。

ピラミッド型なら、
試合期にやってもいいですし、
漏斗型なら、
ピークの試合の1ヶ月前まであたりの
主な練習の1つになるでしょう。

 

7.坂ダッシュ、平地ダッシュ、筋トレ

坂ダッシュについて詳しくは
下記に書いてあります。

坂道のススメ

まず、800m走は、
かなりのスピードで走るので、
スプリントが要求されます。

スプリントを効果的に
養成するのは、坂ダッシュ、
平地ダッシュ、筋トレなど、
全力に近いパワーを
出し切る練習です。

また、スプリントや
筋トレを行うと、
速筋の動員が増え、
1本1本の筋繊維の
負担が減るので、
スピード持久力の養成にも
なります。
東アフリカ系のマラソンランナーは、
この目的で坂ダッシュを
行っているようです。

スプリントは、95%ほどの感じで
リラックスして行いましょう。
レストは2~3分とり、
6秒×6から始めて、
10秒×10あたりまで増やして
いいと思います。
後ろの方を削って、
20秒ほどを入れると、
スピード持久力の
養成にもなります。

スプリントを行う時期は、
ピラミッド型なら、
試合期に近くてもいいですし、
漏斗型なら、
試合期から遠い時期に行う、
ということになります。

筋トレは、為末大さんの
YouTubeチャンネル
「為末大学」あたりを
参考にするといいかと思います。
腹筋、股関節、内転筋など、
鍛え方のみならず、
鍛える意味も解説されています。

 

800mで2分30秒を切る試合の選びかた

記録だけ狙うなら、
現在は、ペーサーがつく
記録会があります。
そのような記録会を選ぶと
いいでしょう。
2分29秒が目標タイムとして
73”ー76”
のペースが理想的でしょう。

勝負レースだったとしても、
オーバーペースだったら
1周目73″になるべく近いペースで
通過するように調整したいです。
前がそのうち落ちてきて

こっちも元気になるでしょう。

 

800mの練習法

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【中長距離走】駅伝日本一、世羅高校に学ぶ「脱管理」のチームづくり(岩本真弥、光文社新書)の感想:自主性と生活指導

 

【中長距離走】駅伝日本一、世羅高校に学ぶ「脱管理」のチームづくり(岩本真弥、光文社新書)の感想:自主性と生活指導

 

 

『駅伝日本一、世羅高校に学ぶ「脱管理」のチームづくり』の著者

 著者の岩本真弥さんは、1965年生まれ、広島県出身。福岡大学卒業。元広島県立世羅高校教諭。世羅高校を全国高校駅伝にて男子5回、女子1回合わせて計6回優勝に導きました。2015年は男女アベック優勝でした。2019年から、2023年現在は、実業団のダイソー女子駅伝部の監督を務めています。
 また、岩本真弥さん自身が世羅高校OBで、青山学院大学長距離の原晋監督の1学年上です。

 

『駅伝日本一、世羅高校に学ぶ「脱管理」のチームづくり』の感想

 

女子は自主的に優勝を目指し始めた

 先述のように、2015年、世羅高校は、全国高校駅伝で男女アベック優勝を達成しました。ただ、女子は、監督主導で優勝を目指したのではなく、女子選手のモチベーションは「男子だけ人気者になったらこっちも困るよね」とか「なんで男子ばっかり注目されるん?」という話が出て、みんながだんだん燃えてきて、チームがひとつにまとまったそうです(笑)。
 筆者は、このような雰囲気になったのも、岩本真弥(元)先生の指導方針が大きかったのではないかと思いました。
 岩本真弥(元)先生が怒るのは、学校の「世羅三訓」、挨拶励行、整理整頓、時間厳守についてだけだそうです。大会前も、ほとんど何も言わない。入学当初は技術的なことを言われたそうですが、練習のやり方なども、生徒に任せる、生徒を信用して自主性を認めてくれるのだそうです。
 普段自主性を認めているからこそ、女子も自主的に、優勝を目指そうという雰囲気になったのだと思います。トップダウン型の強権的な指導者だったら、世羅高校女子の優勝は可能だったでしょうか?

 

指導の根本は日常生活

 先述のように、世羅高校には「世羅三訓」があります。岩本真弥(元)先生は、「タイムさえ良ければそれでいいのではないか」というのは、プロスポーツの世界に限ってのことだとします。岩本真弥(元)先生は、陸上部監督である前に、学校の先生なので、日常生活の指導は大前提。それに加え、生活態度が悪い生徒は、長期的には、必ずどこかで崩れていくと思っているようです。さらに、取り組んでいるのは駅伝なので、集団のルールがおろそかになった状態で、チームとして機能するわけがない、と。
 部活の指導については、普通の公立中学の陸上部で7年間に13回の日本一を達成された原田隆史先生は、「心・技・体・生活」とし、「心」と「生活」を大切にしていました。原田隆史先生は、現在はビジネスマンも指導しており、その時も、「心・技・体・生活」は変わりません。
 また、プロスポーツに関しても、プロ野球の故野村克也監督は「人間的成長なくして、技術的進歩なし」と指導していました。現在、プロ野球界の指導者層には、野村監督の弟子がたくさんいます。

 

速さではなく強さ

 岩本真弥(元)先生によると、「強さ」とは、「心の強さ」「メンタルの安定」であり、そのような選手が最終的には結果を残せると考えているようです。
 「速いけど強さがない」選手は、自分の心をコントロールできず、素晴らしい能力を活かしきれないまま終わっていき、そのような選手を山のようにいる、そうです。
 結局、強さを支えるのは人間性であり、人間性を磨くのは、普段の生活の中。そんな中で監督の役割は、生徒が自分で考えて自分で動く仕掛けを作ることだと考えているようです。
 人間性という点では、上記の日常生活の野村監督の話で出てきました。自主性という点では、やはり、最初の女子が優勝をめざした経緯に出てきました。生徒を管理するのをやめようと。

 

岩本真弥監督と原晋監督の対談

 『駅伝日本一、世羅高校に学ぶ「脱管理」のチームづくり』の巻末には、岩本真弥監督と原晋監督の世羅高校1学年違い対談が掲載されています。お2人の指導は、自主自律を求めるところ、生活習慣を重視する面で似ています。
 そして、最後は「礼を尽くす」「義理人情」といったものが大切ではないか、ということでも、同意しています。

 

まとめ

 『駅伝日本一、世羅高校に学ぶ「脱管理」のチームづくり』には、中長距離走の技術的な話は、ほとんど書かれていません。一方、世羅高校は実際に岩本真弥(元)先生の指導で強くなったのだから、『駅伝日本一、世羅高校に学ぶ「脱管理」のチームづくり』の読者層であろう、成人市民ランナーも、速くなれるかもしれません。
 しかし、それ以上に、本書は、中長距離走ではなく、企業など、組織で管理職の立場にある人が、「管理職」という名に反して「脱管理」を果たし、強い集団を作るために、読んで学ぶべき本なのだと思いました。陸上競技を全く知らない人でも、読んで意味がわかるでしょうし、陸上競技をよく知る人なら、なおさら、腑に落ちることが多いでしょう。

 

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【中長距離走】効果的なレース前調整のコツ:筋肉の適度な緊張を保ちつつ疲労を抜く

 

【中長距離走】効果的なレース前調整のコツ:筋肉の適度な緊張を保ちつつ疲労を抜く

 

はじめに

 十分に休養を取って疲労を抜き、試合の日を迎えたにも関わらず、試合の日に足が重いことが多く、悩んでいませんか?

 実は、ただ休むだけだと、筋肉の適度な緊張が失われ、レースに必要なスピードを出しにくくなります。

 本記事を読めば、休養により疲労を抜きつつ筋肉の適度な緊張を保ち、レースでベストパフォーマンスを発揮する方法を知ることができます。

 

筋肉の適度な緊張が大切

 重要なレース前、1週間ほどは、もちろん、練習量を減らし、回復に努めなくてはなりません。

 一方、休んだ結果、筋肉の緊張度が低すぎると、筋肉の収縮速度が遅くなり、大きな力を出すことができません。その結果、パフォーマンスを低下させる「だるさ」が発生します。

 したがって、休息日には、筋肉の緊張を下げてもいいですが、ポイント練習やレースの前には、筋肉の適度な緊張を保つ必要があります。

 注意点は、不調の原因が筋肉の緊張にあるのか、オーバートレーニングや疲労によるものなのかを見極めることです。筋肉の緊張が低いのは筋肉を中心とした局所的な反応ですが、オーバートレーニングによる体のだるさは、より全身的な感覚です。疲労によるだるさは、足だけではなく、全身の倦怠感があります。走っている主要な筋肉に問題があるのか、それとも全身に問題があるのかを見極めることが、この2つを見分けるポイントになります。

 

試合前1週間の調整

 7日前に筋肉の緊張を大きく上げるハードなトレーニングを行い、3日前には筋肉の緊張を中程度から大きく上げるトレーニングを行い、前日には筋肉の緊張を少し上げるストライドを行うという計画が良いでしょう。レース当日になってもまだ筋肉の緊張が低い場合は、ウォームアップにレースペース以上の100mストライドを取り入れ、レース直前にリバウンドジャンプを4回行うことで、筋肉の緊張を鋭く変化させます。

たとえば、5000mのレースの場合、以下のようになるでしょう。

レース7日前:400m(400jog)×6本を1500mレースペースで行う。またはヒルスプリント10秒(2~3分レスト)×8を行う。

レース3日前:5kmレースペースの200m(200jog)×8

レース前日:100mストライド(流し)6本をレースペースかそれより少し速いペースで行う。

800m、1500mの場合、上記を参考に、ペース、本数を調節するといいでしょう。

 

マラソンのような長いレースでは、筋肉の緊張をある程度上げる必要がありますが、やや低くていいです。

レース7日前:10~12マイルを走り、最後の10分はマラソンペースで走る。

レース前3日間:マラソンペースで5分×2回、その後10Kペースで1分×3回

レース前日 30秒ストライド(流し)を4~5回、ハーフマラソンペースから始めて、5K~10Kレースペースに上げていく。

 

 また、たとえば、中長距離ランナーは、冬などの走り込み期に、いわゆる「バネがない」状況に陥らないよう、たまにスプリントなどを入れたほうがいいということです。

 

筋肉の緊張を上げるもの

・スプリント
・筋力トレーニング
・速めのペースでのインターバル
・ストライド

 

筋肉の緊張を下げるもの

・長いjog
・ゆっくりのjog
・マッサージ
・遅めの長いポイント練習
・温かい風呂
・柔らかい路面でのランニング

 

参考サイト
筆者はSteve Magnessさんという、中長距離走のコーチです。運動科学の修士号を持っています。2019年世界陸上ドーハ大会の女子マラソン6位は、41歳のアメリカのフルタイム勤務の看護師でしたが、Steve Magnessさんが指導したそうです。

 

800mの練習法 

1500mの練習法

5000mの練習法

ピーキング(テーパリング、試合に向けてピークを作る)の考え方

朝練、二部練はすべき? 2回に分けて走っていいの?

乳酸除去能力の高め方

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たむじょー選手の全日本実業団陸上2021 1500m 3分48秒51

 

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【中長距離走】朝練、二部練はすべき? 2回に分けて走っていいの?:有酸素能力と休養

 

【中長距離走】朝練、二部練はすべき? 2回に分けて走っていいの?:有酸素能力と休養

 

 朝練を始めようか、面倒くさいからやめようか、悩んでいませんか?実は、朝練はやった方がいいに決まっていますが、時と場合によって、朝練の意味が違ってきます。この記事を読めば、どんなときは朝練をしたほうが良くて、どんなときは、別に一部練だけでもいいのか、理由から理解することができます。

 

有酸素能力の向上が目的の場合

 特に、鍛錬期に、継続時間の長い有酸素ランニングで、有酸素能力の向上を目指すことが目的の場合、走る時間は分割せずに、1回の練習で長い時間を走り続けるべきことが多いでしょう。中長距離ランナーなら、60~120分ほどは継続して走れるべきです。
 ただし、有酸素能力の向上が目的の場合でも、1日2回のトレーニング刺激を与えることにより得られる特有の適応があるでしょうから、あえて、走る時間を分割する意義はあると言えます。

 

有酸素能力の維持が目的の場合

 能力の維持は、向上よりも、はるかに簡単です。したがって、特に、試合準備期や試合期に、有酸素能力の維持が目的の場合、無理に1回で長時間走らず、2回に分けても、維持という目的は達成されます。たとえば、30分/30分、40分/40分、などと分割してもいいでしょう。

 

休養的練習の場合

 1日2回走ることにより、より、回復力を高める現象が起きるので、走る時間を分割することは意味があると言えます。たとえば、30分/30分などと分割してもいいでしょう。

 

参考サイト
 筆者はSteve Magnessさんという、中長距離走のコーチです。運動科学の修士号を持っています。2019年世界陸上ドーハ大会の女子マラソン6位は、41歳のアメリカのフルタイム勤務の看護師でしたが、Steve Magnessさんが指導したそうです。

 

800mの練習法 

1500mの練習法

5000mの練習法

効果的なレース前調整のコツ:筋肉の適度な緊張

ピーキング(テーパリング、試合に向けてピークを作る)の考え方

乳酸除去能力の高め方

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【中長距離走】乳酸除去能力の高め方:5000m、10000m、ハーフマラソン、マラソン

 

【中長距離走】乳酸除去能力の高め方:5000m、10000m、ハーフマラソン、マラソン

 

乳酸は敵か味方か?

 ランナーに疲労の原因を尋ねると、ほとんどの場合、乳酸と答が返ってきます。この言葉を聞いただけで、レース終盤の激痛や苦闘、悪名高い尻もちなどの記憶がよみがえります。しかし、現在の運動生理学では、乳酸は疲労物質ではない、ということになっています。ランナーの味方であり、敵ではありません。乳酸は、悪者ではなく、速く走るための重要な燃料源なのです。

 

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 乳酸が悪者扱いされているのはなぜでしょうか?速く走れば走るほど、乳酸の生産量と消費量は増えます。よく訓練されたランナーであれば、乳酸を生産してもすぐに「排出」することができます。しかし、ある時点で、速く走ったため、あるいは速いペースを長く維持したために、血流から排出できる量よりも多くの乳酸が生成されるようになります。このとき、乳酸生成に伴う水素イオンは、エネルギー生成に使われる酵素を停止させ、カルシウムの取り込みを阻害する可能性があります。その結果、筋肉の収縮能力が低下し、減速せざるを得なくなるのです。つまり、一般的に「乳酸」に関連するすべての感覚は、乳酸を生成するのと同じくらい速く処理できなくなったときに現れるのです。

 LT走(テンポ走)やクルーズインターバル(LTペースで行うインターバル)は、この問題を解決するための伝統的なトレーニング手段です。これらのトレーニングは、乳酸の産生が進むにつれて乳酸を除去する能力、または耐性を向上させることで、より速いペースをより長く維持することを可能にします。しかし、エリートコーチやケニア人アスリートは、レース中に乳酸の使用量を増やし、乳酸とそれに付随する疲労物質をより早く排出できるよう、新たな工夫を凝らしています。

 

乳酸除去能力を高めるには?

 イタリアのコーチであるレナート・カノーヴァ(Renato Canova)は、東アフリカのランナーは欧米のランナーよりもレース中のスピードで乳酸を排出する能力が高いと信じています。多くのランナーは、LT走、あるいは15kmからハーフマラソンまでのレースペースであれば、乳酸を素早く排出することができますが、それ以上になると排出メカニズムに負担がかかり、血中に乳酸がどんどん流れ込んできます。

 この問題を解決するために、私達はLT走を継続的に行い、乳酸を除去する能力を徐々に向上させる傾向にあります。この方法の第一の欠点は、より速いレースペースで乳酸を除去することを身体に教えることがほとんどできないことです。もうひとつは、LT走の場合、乳酸の排出は比較的一定なので、より速く排出する方法を考えなければならないほど、身体にストレスがかからないということです。

 このような欠点を回避するために、2つのトレーニングが利用できます。つまり、乳酸の産生を高めるために速く走る区間と、それまでに産生された乳酸を排出するためにゆっくり走る区間が続くようにするのです。

 

alternations(交互)

 最初の方法は、レナート・カノーヴァがalternations(交互)と呼ぶものです。alternationsは、連続したランニングで、少し速く走る区間と少し遅く走る区間を交互に繰り返すものです。ハーフマラソンやそれ以下のレースでは、1区間はレースペース、もう1区間は従来のLTペースよりやや遅めのペースで走るのが目標です。この場合、通常のLT走のペースより1マイルあたり20秒から40秒遅いペースを目安にするとよいでしょう。トレーニング期間中、この区間のペースを徐々に上げていき、2つの区間のペースの差が小さくなるようにします。マラソンのトレーニングでは、レースペースと、最初は1マイルあたり15〜20秒速いペースを交互に繰り返すことで、マラソンペースでも乳酸を燃料として使用できるように体を鍛えます。

以下は、ハーフマラソンまでの交互走の流れです。

 

ハーフマラソンのためのalternations

ハーフマラソンまでの10週間、この一連のトレーニングを行い、レースペースでの乳酸除去能力を向上させる。RP=ハーフマラソンの目標ペース。

10週前

400m(RP+3秒/km)と1200m(RP+25秒/km)を交互に10km。

8週前

600m(RP)と1000m(RP+22秒/km)を交互に10km。

6週前

800m(RP-3秒/km)と800m(RP+22秒/km)を交互にを交互に10km。

4週前

1000m(RP-6秒/km)と600m(RP+19秒/km)を交互に12~13km。

2週前

1000m(RP-6秒/km)と600m(RP+12秒/km)を交互に12~13km。

 

blends(混ぜる)

 乳酸除去能力を向上させるための新しいトレーニングの2つ目は、blendsです。「乳酸を素早く除去する能力を高めるために、長いインターバルと短いインターバルを混ぜる」ものだとレナート・カノーバは言います。

 この方法は、休憩時間を挟んでインターバル方式で行うことを除けば、alternationsと似ています。トレーニングでは、1マイルのような長いインターバルに続いて、1/4マイルのような短いインターバルがあり、その後、長いインターバルに戻り、この順序を数回繰り返すのです。短い区間の前の休息時間も比較的短く、長い回復を経てサイクルが繰り返されるはずです。

 blendsのメカニズムは若干異なりますが、速い区間が乳酸の産生を高め、長い区間がその乳酸に対処するという大前提は変わりません。レナート・カノーバによると、その主なメカニズムは、トレーニングによって「細胞膜の透過性が向上する」こと、つまり乳酸が筋肉から出たり入ったりしやすくなることだそうです。

以下は、5kmまでのblendsのしかたです。

 

5Kmのためのblends

5Kまでの10週間、この一連のトレーニングを行い、レースペースで乳酸を排出する能力を向上させます。RP = 1kmあたりの5K目標ペース。

10週間前:(2000m@RP (2’jog) 200m@RP-12″/k)×3、セット間4’jog

8週間前:(2000m@ RP-6″/k (2’jog) 300m@ RP-15″/k)×3、セット間4’jog

6週間前:(1600m@RP-6″/k (2’jog) 300m@RP-15″/k)×3、セット間4’jog

4週間前:(1200m@ RP-9″/k (2’jog) 400m@ RP-18″/k)×3、セット間は4’jog

2週間前:(800m @ RP-12″/k (2’jog) 400m@ RP-21″/k)×3、セット間は4分4’jog

 

新しい乳酸除去トレーニングの活用

 重要なのは、トレーニングプログラムにおいて、それぞれをどのように使用するかを理解することです。

 alternationsは、トレーニング期間中ずっと使用することができます。初期の段階では、低速区間がランの大部分を占める高度なLT走と考えるのがベストです。シーズン中にこれを行うには、alternationsの表で示したように、速い区間を長くして、少なくとも遅い区間と同じ長さにします。目標は、重要なレース前の最後の数週間で、速い区間が遅い区間と同じかそれ以上の長さになるようにすることです。

 blendsは、主にトレーニング期間の中盤から後半にかけて、または従来のインターバルが使用される時間帯に使用されるべきです。最初のうちは、速いインターバルの長さを100mから300m程度にし、後半はスピードと長さを徐々に上げて、トレーニングの強度を高めていくようにします。

 これらのトレーニングは、適応のための貴重な新しい刺激と、トレーニングのバラエティを増やすことの両方を可能にするはずです。従来のLT走やインターバルを捨ててしまうのではなく、隔週でこれらの新しいバリエーションをトレーニングプランに加えることで、トレーニング、ひいてはレースでのタイムに弾みをつけることができます。

 

参考サイト
筆者はSteve Magnessさんという、中長距離走のコーチです。運動科学の修士号を持っています。2019年世界陸上ドーハ大会の女子マラソン6位は、41歳のアメリカのフルタイム勤務の看護師でしたが、Steve Magnessさんが指導したそうです。

 

800mの練習法 

1500mの練習法

5000mの練習法

効果的なレース前調整のコツ:筋肉の適度な緊張

ピーキング(テーパリング、試合に向けてピークを作る)の考え方

朝練、二部練はすべき? 2回に分けて走っていいの?

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たむじょー選手の全日本実業団陸上2021 1500m 3分48秒51

 

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【中長距離走】ピーキング(テーパリング、試合に向けてピークを作る)の考え方:1週間前の調整法

 

【中長距離走】ピーキング(テーパリング、試合に向けてピークを作る)の考え方:1週間前の調整法

 

 大切なレースの前は、練習を減らしたほうがいい(テーパリング)と、わかってはいるものの、不安で練習を減らせず、悩んでいませんか?実は、この問題は、大学の研究者の理論と、現場のコーチとで見解が別れる、意外に難しい問題です。この記事を読めば、この問題の背景にある事情を理解することができます。

 

中長距離走 ピーキングの問題

 

 長期間の厳しいトレーニングの後、目指していた大きなレースまでの最後の1週間ほどは、比較的簡単だと思われるでしょう。しかし、コーチやランナーにとって、「テーパリング(練習量を落とす)」と呼ばれる最後のトレーニングの計画ほど怖いものはありません。数ヶ月間、素晴らしいトレーニングを積んできたにもかかわらず、レース当日に体が完全におかしくなってしまい、まずいレースになってしまったという話は枚挙にいとまがありません。では、なぜこのわずかなトレーニングが、これほどまでに重要であり、問題を引き起こすのでしょうか?

 最高のコーチや科学的研究が推奨するものを見れば、ピーキングに関する悩みの答えはかなり簡単なはずです。しかし、いわゆる専門家による推奨は、事態をさらに混乱させるだけであることが分かっています。

 最適なピーキングに関する科学的見解は、最近の研究によって要約することができます。持久系アスリートのピークキングに関するさまざまな研究を分析した結果、トレーニング強度を維持するかわずかに高め、主要なトレーニングは速いペースに集中し、量を60数%減らすことが最良の方法であるという結論に達したのです。あるいは、簡単に言えば、走行距離のほとんどを取り除くような劇的なトレーニングの変更です。この高強度・低ボリュームのアプローチをドラマチックテーパーと呼ぶことにします。
 一方、多くのエリートコーチは、もっと緩やかなテーパリングを好み、全く変化を与えないことを選択します。2010年の室内世界選手権ファイナリスト、ティム・ベイリーのコーチであるクリス・パピオーネは、簡単に言うと、「今までうまくいっていたことは、そのまま続けろ。トレーニングで自分の強みから離れすぎないように。」という哲学を持っています。さらに、パピオーネ氏は、有酸素運動による刺激がなくなると、「陳腐化と疲労を招くだけだ 」と注意を促し、10%しか量を落とさないことを勧めています。

 グレッグ・マクミランコーチも同じ信念を多く持っています。5kmと10kmのアスリートの場合、彼の典型的なプランでは、2週間で25%のボリュームダウンが含まれています。よりハードなトレーニングでは、レースペースのトレーニングに加え、自分の強みに焦点をあてたトレーニングを行うことを勧めています。例えば、持久力重視の人は、LT走のような少し遅めのトレーニングに集中し、スピード重視の人は、レースペースより速めのトレーニングを取り入れる。最終的には、「ピーキングで最も重要なのは心理学である」と言います。アスリートが気持ちいいと感じるようなトレーニングを提供したいのです」。ピーキングに対する考え方が大きく異なる中、アスリートはどうすればいいのでしょうか?

 

なぜ、コーチと科学者は意見が違うのか?

 コーチとランナーは個人を扱い、科学者は平均を扱います。私たちのエリートコーチが提案するように、テーパリングの個人化が最も重要なのです。このことを概念化する一つの方法は、私たちの筋肉を構成しているものという観点から考えることです。人間の筋肉は数種類の筋繊維で構成されており、それらは遅筋繊維と速筋繊維に大別されます。一般に、短距離や高速のレースを得意とするランナーは速筋が多く、ウルトラマラソンをするランナーは遅筋が多いです。筋肉内の混ざり具合が違うことを考えると、なぜこれほど多くの異なるピーキング方法が推奨され、トップコーチがアスリートによって異なるトレーニングを行うのかが理解できます。同じ大会に向けてトレーニングしていても、遅筋の多いウルトラランナーと速筋の多い中距離ランナーでは、ピーク時の反応も違ってくるのです。

 2つ目の要因は、おそらく最も重要なことですが、研究は心理学を扱わないということです。ランナーである私たちは、週に一定の日数、一定の距離を走るというルーティーンに慣れています。そこから大きく外れると、コンフォートゾーンから外れることになります。マクミランが言うように、「あなたは頻繁な間隔で走ることに慣れていて、それを減らすと、あなたの道から外れます。」はっきりしているのは、ピークの目標は、疲労が解消され、かつ自信と有酸素能力が損なわれない程度にトレーニングを減らすことであるということです。

 最後に、研究の進め方が結果に影響します。多くの研究は、サイクリストとスイマーを対象に行われています。例えば、1日4〜5時間のトレーニングを2〜3時間に減らすなど、トレーニング量を50%減らしても、相当な有酸素運動による刺激を受けることができるのです。

 

ピーキングの生理学

 では、実際にピーキングによってパフォーマンスが向上するのはなぜでしょうか?科学者たちは早くから、酸素を運搬し利用する能力の変化が促進されるのではないかという仮説を立てていました。ヘモグロビンや赤血球の量が増えることで、血液中の酸素運搬能力が変化することはわかったものの、VO2max(最大酸素消費量)の増加を実証した研究はほとんどありませんでした。

 むしろ、筋肉の力を生み出す能力の変化、簡単に言えば、筋肉が強くなることが主な要因だと考えられています。興味深いのは、この変化が特定の筋繊維にしか起こらないということです。ピーキングは速筋にプラスの影響を与えるが、遅筋には影響を与えないか、マイナスになる。ピーキングがパフォーマンスを向上させる場合、速筋の強度が向上し、遅筋は変わらないということが研究で実証されています。逆に、ピーキングが効かず、パフォーマンスが上がらない場合は、遅筋の強度が低下しているためです。

 これは専門的な話かもしれませんが、さまざまなピーキングの方法に対して、なぜ個人によって反応が異なるのかを示す根拠を与えてくれます。繊維の種類でランナーを分類するのではなく、より実践的なアプローチで、マクミランがランナーを “持久力のモンスター “と “スピードの悪魔 “に分けたように、ランナーをその強さで分類すればいいのです。

 

ピークキングの個別化方法

 自分のベストピークを知るための最初のステップは、自分がどのようなランナーであるかを知ることです。 もしあなたがアルベルト・サラザールのようなランナーで、遅筋が約99%あるとして、速筋の強度を高めるためにピークキング戦略を用いることは意味があるのでしょうか?もともと少ないのですから、その強度を高めても意味がないのでは?繊維の種類を特定するために、高度な検査は必要ありません。実際、自分の繊維タイプを正確に知ることは、ほとんど意味がありません。

 その代わり、自分が走るレースの距離で、スピードと持久力のどちらが優れているかを調べます。これはとても簡単なことです。まず、短い距離と長い距離で自分のベストタイムを評価し、自分の強みがどこにあるのかを把握します。www.McMillanrunning.com にあるようなレース計算機で自分のベストタイムを入力し、短いレースと長いレースのどちらが計算機の予測タイムに近いかを確認するのがよく役に立ちます。次に、自分が得意とするトレーニングは何かという質問に答えます。短くて速い200m走の繰り返しなのか、長くて遅いLT走なのか。もし、あなたが速いトレーニングで成長するのであれば、スピード重視の人であり、長いトレーニングが好きなのであれば、持久力重視の人であると言えます。

 このような知識を得た上で、自分に最適なピ ーキング戦略を見つけるのです。エリートではないランナーの多くは、科学者が推奨する劇的なテーパリング法に従う傾向があります。しかし、この2つのアプローチを比較すると、エリートコーチが使うアプローチに多くのメリットがあることがわかるはずです。自分のランニングに適応させるには、いくつかの簡単なガイドラインに従ってください。コーチが提案したように、平均的なトレーニング量から毎週10%ずつ、2週間、合計25%程度、少しずつトレーニング量を減らすことにこだわってください。一般に、スピード重視のランナーは、速筋の強度が上がるため、もう少し量を減らしても大丈夫です。スピード重視のランナーには、1週間に15%程度の減量にとどめています。持久力重視のランナーは、1週間に約10パーセントの減量にとどめておくとよいでしょう。

 ハードなトレーニングの場合、劇的な変化は避け、これまでやってきたことに集中します。McMillan氏とPuppione氏は、新しいスピードトレーニングに取り組むのではなく、週に1回レースペースに集中し、もう1回は自信をつけるために自分のパフォーマンス力に焦点を当てたトレーニングを行うことを勧めています。例えば、スピード重視のランナーには、速いペースのインターバルで十分でしょう。例えば、5km走のランナーであれば、3kmから1kmのペースで200本または400本のインターバル走を行うのが典型的な例です。持久力重視のランナーには、10KペースやLT走のようなゆっくりしたセッションが適しています。レースペースと自信をつけるために、この2つのトレーニングに重点を置くことで、より良い結果を得ることができます。最後に、ランニングのルーティーンはできるだけそのままにすることです。つまり、走る頻度を大きく変えないということです。

 このように緩やかなテーパリングをすれば、研究で推奨されているような劇的なピークに挑戦するよりも、よりピークを迎える可能性が高くなります。新しいストレスや変化を導入し、魔法のようなパフォーマンスアップを期待する劇的なテーパリングに比べると、退屈で淡々としたものに見えるかもしれません。しかし、この場合、当たり障りのない退屈なものであれば、体がショックを受けることもなく、自信を持つことができるはずです。私たち強迫観念の強いランナーにとって、劇的なテーパリングは疑問でいっぱいになり、おそらく体力を失ったように感じてしまうようです。生理学的にはそうではないかもしれませんが、大きなレースの前にそんなことが頭をよぎるのは嫌なものです。結局のところ、最も重要なのは、スタートラインに立ったときに自信を持てるようなことをすることなのです。

 余談ですが、世の中で普通「テーパリング」と言えば、量的緩和策による金融資産の買い入れ額を順次減らしていくこと、つまり出口戦略を指します。「次第に先が細くなる、順次減らしていく」という意味では同じですね。

 

参考サイト
筆者はSteve Magnessさんという、中長距離走のコーチです。運動科学の修士号を持っています。2019年世界陸上ドーハ大会の女子マラソン6位は、41歳のアメリカのフルタイム勤務の看護師でしたが、Steve Magnessさんが指導したそうです。

 

800mの練習法 

1500mの練習法

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【感想】1日10分も走れなかった私がフルマラソンで3時間を切るためにしたこと(カンゼン)などのオススメ度

 

【感想】1日10分も走れなかった私がフルマラソンで3時間を切るためにしたこと(カンゼン)などのオススメ度

 

1日10分も走れなかった私がフルマラソンで3時間を切るためにしたこと(カンゼン)

 

対象

サブスリーを視野に入れている女性市民ランナー

 

感想

まず、題名にある
「1日10分も走れなかった」
時代について、
全く触れられていないのが、
マイナスだと思います。

平塚潤さんという、
世界陸上代表で、
箱根駅伝の監督もされた方が
監修し、本書中にも登場するので、
内容は、かなりまともだと思います。

実質的には、
著者の女性を
全面に出してはいるものの、
平塚潤さんのマラソンの技術書、
というところではないかと思います。

1年間の流れ、3月は休養重視、
などということが
書いてあるのはいいと思います。

サブ3、3.15、3.5を目指す人について
ポイント練習を
・距離走20~30km
・ミドル走15~20km
・ペース走5~10km
・インターバル1000(200)×5
に分類して、解説しています。

10分走れないところからの、
体力づくり、
練習メニューについては、
『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』
(ベースボール・マガジン社)が、
原理、考え方から
しっかり書いてあって、
優れていると思います。

 

筋トレ、ストレッチについては、
世界陸上400mHで
銅メダル2回の為末大さんの
YouTubeチャンネル「為末大学」が、
やはり、原理、考え方から
語られていて、
優れていると思います。

 

本書は、おしゃれめな本で、
実際にサブスリーを達成した
女性のエピソードとともに、
あまり理論的に考えたくないが、
まずまず理論的にしっかりした
トレーニングをしたい、
という人には、
おすすめできると思います。

 

おすすめ度

 

目次

序.効率の良いサブスリートレーニング
 サブスリー達成には何が必要なのか?
 フォームや動きにこだわる
 スピード練習と距離走を上手に組み合わせる
 走る距離にこだわりすぎない
1.速くきれいに走るために必要なこと
 フォーム改善のために意識してきたこと

 必要な筋肉がつくとフォームは自然と変化する
 アゴを上げない
 肩甲骨を動かす
 猫背にならない
 ストライド走法とピッチ走法どっちが正しいの?
 腰高のフォームって?
 軸のブレない走りって?
 正しい腕振りの方法は?
 つま先着地?かかと着地?
2.レースの目標タイムと練習ペースの設定
 モチベーションの上がる上手な目標設定を

 レースに向けた年間スケジュールを考えよう
 フルマラソン記録達成への道
 年間スケジュールの立て方
 レース6週間前からの調整メニュー
3.サブスリー達成のためのトレーニング
 サブ3.15からサブスリーへの階段とは?
 超効率的なサブスリートレーニングの4本柱
 距離走
 ミドル走
 ペース走
 インターバル走
 スピード+ロングランのセット練習で相乗効果を狙う
 効率よく走力をつけるための週間トレーニングメニュー
 本格マラソントレーニング1~3
4.毎日続けたくなる!かんたん筋トレ
 筋力トレーニングはランニングへの効果絶大

 ランニングで使う筋肉を知ろう
 プッシュアップ・オン・ニー
 バックエクステンション
 スプリントスクワット
 ヒップリフト
 クランチ
 カーフレイズ
5.自宅でできる!かんたんストレッチ
 質の高い練習を継続するために体のメンテナンスは大切

 ハムストリングス
 股関節
 脊柱起立筋
 大腿四頭筋
 大臀筋
6.今さら聞けないランニングのお悩みQ&A

 

 

 

陸上競技中長距離 トラック走を極める!(メイツ出版)

 

 

『陸上競技中長距離 トラック走を極める!』の対象

800~5000m走のことを
ほとんど知らない初心者。

 

『陸上競技中長距離 トラック走を極める!』の内容、感想

まず、800m日本記録保持者
川元奨選手、
元1500m日本記録保持者
小林史和選手、
5000m日本記録保持者
大迫傑選手
元3000m障害日本記録保持者
岩水嘉孝選手のインタビューが
収録されています。
競技関係の生い立ちなどが
語られますが、
あまり役に立たないと思います(笑)。

次に、ランニングフォームについて
載っています、
しかし、このあたりは、
世界陸上400mH銅メダル2回の
為末大さんのYouTubeチャンネル
「為末大学」がわかりやすく、
優れていると思います。

ただし、3000m障害の人は、
障害の越え方は、
本書を読むといいと思います。
ただ、これも
たむじょーさんのYouTubeチャンネル
解説されています。

次に、中長距離走の
レースの駆け引きについて
載っています。
このあたり、
トレーニングに特化した本には、
意外と書いていないので、
初心者は読んでおくといいでしょう。

次に、トレーニングについて
書いてあります。
漸進性
(故障しないよう徐々に負荷を高める)
など、トレーニングの大原則について
書いてあるのは良いのですが、
具体性に欠けると思います。
リディアードのランニングバイブルや、
ダニエルズのランニング・フォーミュラで、
しっかり学びたいところです。
その後のストレッチ、筋トレも
「為末大学」が優れていると思います。

 

 

次に、食事、睡眠、入浴で
回復するのも大切だ、
ということが書かれています。
練習日誌に書くべきことなども
書かれています。

 

『陸上競技中長距離 トラック走を極める!』おすすめ度

初心者は◯

 

『陸上競技中長距離 トラック走を極める!』目次

1.記録保持者がアドバイス 中長距離で速く走るコツ
2.中長距離のフォーム作り
3.中長距離のレースでの駆け引き
4.中長距離のトレーニング
5.パフォーマンスを発揮するためのコンディショニング

 

 

陸上競技長距離・駅伝 自己ベストを出せる!(メイツ出版)

 

『陸上競技長距離・駅伝 自己ベストを出せる!』の対象

長距離、駅伝を楽しみたい、
初心市民ランナー

 

『陸上競技長距離・駅伝 自己ベストを出せる!』の内容

表紙に書いてある監修者は、
オリンピックマラソン代表で、
箱根駅伝の指導者としても、
チームを立て直した方です。

ただ、
実際に執筆しているのは、
誰だかわからんなあ、
というところです。

まず、第1章は
「理想のフォームを身につける」です。

接地の説明で
「カカトから着地して、
 拇指球で蹴り出す」
とあります。
カカトで接地というのは、
それほど速くない
市民ランナーが対象なので、
いいかもしれません。

しかし、
「蹴り出す」という言葉については、
「本書でも地面の反発を利用」
とあり、
言葉の問題かもしれませんが、
世界陸上400mHで銅メダル2回の
為末大さんの
YouTubeチャンネルでは、
一貫して「蹴らない走り方」
という言い方をしています。

現在の陸上界では、
このような表現が主流だと思います。

為末さんは、他の動画で、
タイムが遅い
市民ランナーのマラソンでも、
原理は同じだ、と言っています。

次に、本書には、
モモ上げドリルが載ってます。
「拇指球に体重を載せ」
はいいと思いますが、
「膝を高く上げてひきつける」
とあります。
為末さんは、モモ上げは、
「膝を上げるのではなく、
 逆足で地面に乗っかる」
と言っています。

 

次に、
乳酸を疲労物質と表現していますが、
現在の運動生理学では、
乳酸は疲労物質ではない、
ということになっています。

 

5000m、10000m、
マラソンの練習メニュー、
設定ペースなども載っており、
内容も適切だとは思います。
しかし、練習メニューについては、
『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』
などで、原理から理解し、
体力、持ちタイムにしたがって
立てるのが良いかと思います。

 

長距離走の春夏秋冬のアイテム、
駅伝の魅力、オーダーの組み方、
Jogのペースは話しながらでも
楽に走れるペースで、
栄養学の基本、などが
書かれているのは
いいと思います。

 

『陸上競技長距離・駅伝 自己ベストを出せる!』のおすすめ度

 

『陸上競技長距離・駅伝 自己ベストを出せる!』の目次

1.理想のフォームを身につける
2.団体競技の駅伝を楽しむ
3.目的に合わせたトレーニングをする
4.ストレッチ&補強エクササイズ
5.レースに勝つための栄養学

 

陸上競技中距離・長距離の練習法

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