【感想・書評】コスパで考える学歴攻略法(新潮新書、藤沢数希):中学受験のメリット、デメリット

 

中学受験の国語の勉強法

中学受験の算数の勉強法

中学受験の理科の勉強法

中学受験の社会の勉強法

塾に行かない高校受験

塾で教える高校入試塾技80理科(文英堂)

 

コスパで考える学歴攻略法(新潮新書、藤沢数希)

 

2022年11月17日発売。

 

 

 

藤沢数希(ペンネーム)氏のプロフィールは?

 中学受験をして地方の私立中高一貫校を経て、東京の大学に進学したとのことです。
 東大ではないようです。氏のツイートなどからは、度々、東大に対する劣等感が伺えます。もちろん、経済合理的には、東大理系よりも地方の国立医学部に進学したほうがいいのかもしれませんが、氏からは、どうも、東大を貶めようという意図を感じます。
 大学では、学部時代から研究成果を出し、海外の大学院から奨学金のオファーをもらい、留学して理論物理学の分野で博士号を取得。その後は、外資系投資銀行の東京オフィスに就職。クオンツやトレーディングなどの業務に就き、その間も書籍を執筆する。現在は、会社をやめ、香港で会社を作り、文筆業、ベンチャー企業への投資などをしているそうです。
 大学時代には、中学受験塾でアルバイトをしていて、最近は身内の子供たちに勉強を教えていたので、日本の受験産業を内外からよく知っていると自負している、と語っています。
 他の著書に
・なぜ投資のプロはサルに負けるのか?(ダイヤモンド社 、2006)
・日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門(ダイヤモンド社、2011)
・「反原発」の不都合な真実(新潮新書、2012)
・外資系金融の終わり(ダイヤモンド社、2012)
などがあります。

 

書評、感想

 

中学受験の是非は?

 藤沢数希氏は、中学受験をかなり肯定的に考えているようです。ただし、その根拠が、論理的な氏にしては情緒的で、
「中学受験で国語の勉強をしっかりやれば、小学生の間に社会人として十分な漢字の読み書き、語彙、そして、読解力が身につくことになる。」「日本語を書く力もそこそこは身につく。」(子供が中学受験に前向きでさえあれば、これについては、そうかもしれません。)
「親と子がこれほど同じゴールに向かって共に取り組めるものはない。」(他にもあるでしょう。)
「たとえ単なる志望校の合格か不合格かという結果で見れば勝てなかったとしても、そこで得られたものは大きく、次の戦い、すなわち大学受験ではこの敗戦がきっと生きてくる。」(得られるものとはなんでしょう。中学受験でボロボロに負けて、自己肯定感を失った状態で、公立中学に進学する子も多いようです。)
「中学受験の最大の果実は志望校に合格することではなく、毎週順位の出るテストを受けながら塾で授業を受け家庭で猛勉強するそのプロセスにこそあると思う。」(たしかに、世の中、結果だけでなく、プロセスが大切なものは多いと思いますが、中学受験の場合、具体的になぜそのプロセスが大切なのでしょう?)
といったものです。

 ただし、氏も、中学受験のデメリットについても、しっかり書いていて、
「中学入試の理科が出来たところで、大学入試の物理や化学などの科目の足しにはあまりならないのだ。」
「そもそも、東大、京大合格者数ランキングに載っているような名門中学に合格する子供は一握り」
「小さいころから高い金を払って子供を塾に通わせ、私立中学に無理矢理押し込んでも、ほとんどの子供はそんな親をウザいと思うだけだろう。今風の言葉で言えば毒親である。」
などとしています。
 このあたり、親はどのような態度であればいいかは、大学教授による大学の研究に基づく書籍、先鋭的な指導者による書籍、などには、おおむね同じようなことが書いてあるので、中学受験に臨む保護者は、子供に勉強しろ云々言う前に、自分が勉強すべきです。
 また、私立に通った場合、公立と比べて偏差値がどのくらい上がるか、雑誌のデータを引用して論じています。ただ、このデータがどうなのかな、とも思います。

 ちなみに本記事の筆者は、

塾に行かないで合格する中学受験の勉強法

というサイトを運営しています。本書の筆者も含め、中学受験に塾は必須、と言われますが、東大に何十人も入るような中学を目指す小6なら、中学入試程度は自己管理して、市販の参考書で独学して合格してもいいのではないか、と思います。

 

英語の発音?

 藤沢数希氏は、Twitterなどで(本書でも)、度々、英語の発音矯正アプリを推薦します。本書でも、中学生のころから、発音記号と、それに対応した舌の位置や口の形などを覚えた、と、英語の発音について触れています。
 しかし、英語の発音というのは、そんなに重要なのでしょうか?
 ニュースなどでは、よく、国際的な機関に勤める非ネイティヴの人が、英語で会見をしているような場面があります。その人達の英語は、たとえば、ニューヨークの人達が話すような英語ではなく、いわゆる日本人が話す日本人英語のようなもので、厳密な発音なんて、そんなに気にしていないように思います。
 そして、本書においても、その後、発音と英会話力の因果関係は、どうも論じられていないようです。

 

 

 

このような人は読むべき

 少し、本書に対する疑問点も挙げてしまいましたが、一方で、本書は、おおむね、まともなことが書かれていると思います。特に、以下のような人は、熟読するとよろしいかと思います。

・学歴はあったほうがいい、という当然のことを確認したい人
・「いい大学」がわからない人、特に、超有名大学よりやや低めの層
・東大入試の概要を知りたい人
・日本の教育はなぜ、高校までは良く、大学がダメか理解したい人
・日本の大学の卒業のコスパの良い生かし方を知りたい人
・博士課程に進学して研究者として成功したい人
・中学受験全般について知りたい人
 (ただし、上記のように、やや論理的根拠薄く、中学受験を好意的に捉えているように思う)
・中学受験の費用を知りたい人
・大手中学受験塾のカリキュラムの仕組みを知りたい人
・どの中学受験塾に入ればいいか迷っている人
・中学受験の各科目の特徴を知りたい人
・中学受験の算数に親が関わる際の注意点を知りたい人
・高校入試のメリット、デメリットを知りたい人
・英語学習開始の適切な年齢を知りたい人
・(発音以外の)英語習得法を知りたい人(ただし、本人のやる気次第)
・プログラミング教育開始の適切な年齢を知りたい人
・理系は医学部に行くべきかの見解に興味がある人
・数学をなぜ勉強するのか知りたい人(あとがき)

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